2014年3月6日木曜日

技芸

何かを表現したいけど、その表現する方法が思いつかない。

昔からそう。
絵を描きたい。本を書きたい。詩を詠いたい。曲を作りたい。
でも巧くいかないし、思うようにできない。
ほかにもいろいろ。
陶芸や彫刻や版画。演劇やダンス。

元来、人とのコミュニケーションが下手で、日常会話でも自分の考えを表に出すことが出来なくて。
だから、考えていることや、感じていることを、絵にしたり、文字に起したり、音や形や動きで表現できることが、率直に凄いと思うし、憧れる。
それらに従事する全ての人が、全てを理想どおりに表現しきれているとは思わないし、それに少しでも近づくため、日夜弛まぬ努力を続けていると知っているけれども、羨ましいと思う。

いまの私が何かを表現したり、あるいはそれを支える裏方として生きることはできないから、徒の観客でしかないけれど、もし二度目の人生があれば、何かで表現する人になりたい。

2014年3月3日月曜日

先日、劇団わくわくバキバキの旗揚げ公演「オカアサンニナニスルノ!」を観に行きました。
偶々、ツイッターで種崎敦美さん(劇団主宰)をフォローした直後に、旗揚げ公演のチケットを発売中だとツイートされたのを見て、そういえば今年は未だ劇場に足を運べていないことに気が付き、予約したのです。

観 に行くのであれば千秋楽をと思ったのですが、予想を上回るほどの人気ぶりらしく、チケットの予約状況を確認したときには既に完売。そこで職場には休暇届を 提出の上、初日(平日の金曜日)のチケットを予約したものの、都合により仕事を外せなくなり、劇団側に予約を初日から二日目(三日間しか公演が無かったの で、中日です・笑)に移していただきました。快く変更を受け付けてくださり、ありがたいです。
ちなみに、それからしばらくして、チケットは全日程とも完売になりました。すごい。

事前に殆ど情報収集をしていなかったので、劇の内容は幕を開けるまで全く知りませんでした。タイトルからは、いかようにも予想できるので、わくわくどきどきしながら、席について開演を待ちます。(コメディタッチに描いた社会派の劇かな?と漠然と予想していました)

そして開演時間を迎えて暗転。
予想を超えていました。
女子高生(末妹)がひとりいる居間に、プラカードを手に持ち、叫びながら登場する女性(長女)。窓枠を潜り、テーブルの上で踊り出す、売れないアイドル(次女)。母親の面影を求める末妹に対して、空回りする父親。
末妹の前では優しい母親だったけど、末妹以外は母親と言えばトラウマ以外の何でもなく、そこに齟齬があり、溝は深くなって、家族関係どころか精神までひび割れ、壊れていく。
登場シーンから、生前の母親からの仕打ちで、長女や次女が通常ではない精神状態に追い込まれているのだなと知らされますが、物語が進行していくうちに、最も危ういのは末妹であることに気が付きます。
元々、恐怖の象徴でしかない母親から少しでも離れたかった長女や次女は、母親が死亡してからも家に寄りついていなかったのですが、不幸な事故も重なり、父親、次女、長女の順に亡くなります。そしてひとりきりになった末妹も……。

拙くも文章に起こすと重たい内容ですが、合間には笑いを取りにくる要素がこれでもかというくらいに、ふんだんに散りばめられています。
し かし前述どおり、事前情報は何も仕入れていなかったので、幕が上がってしばらくはブラックコメディだと気が付かなかったため、物語序盤の笑いどころでは、 声をあげて笑ってよいものか、少しの間、真剣に悩みました。観客席の殆どが、序盤は音も立てずにジッと見ていたので、恐らくはほかの観客も同じ思いだった と思います。
気が付いたあとは寛いで、皆も我慢せずに声をあげて笑いました(笑)

物語中盤にはアドリブも盛り込まれて(想定外ではなく、進行に予定されていたのだと思います)、役者が戸惑いながらも巧みに切り返す術は流石だと思いました。
また、末妹が最も危ういと気が付かされたときに、登場シーンからさり気なく手首に巻かれていた包帯の意味を理解したときは、いい演出だと素直に感心しました。(そのあとも劇中では一切、包帯について触れないだけに、観客に押し付けないさり気なさがまた良いと思います)
タイトルは片仮名表記ですが、前述の演出を考えると、漢字や平仮名表記にしなかった理由が、これもわかる気がします。

シナリオ全体も面白かったですし、その内容だけに、観客の空気を重たくし過ぎないように、要所に笑いどころを置いていたし、役者や演出の技術も堪能できて、なかなか素晴らしい劇だったと思います。

次回公演も、是非、観に行こうと思いました。


[2014/03/04追記]
劇団わくわくバキバキのブログで深田さん(末妹役)が記載しましたが、手首の包帯は、本番前に実際にけがを負って巻かれたものだそうです。深読みし過ぎていました。あちゃー。
もう抜糸も終えているそうで、何よりです。